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昨日のA級最終戦を見て

昨日は将棋A級順位戦最終局。静岡市で一斉対局だった。
AbemaとYouTubeをハシゴしながらほぼ釘付け、ただし2時間弱散歩はしたが。

藤井名人への挑戦権は豊島九段が獲得。
A級陥落は広瀬九段と齋藤八段で、これは私ばかりではなく、大方の将棋ファンにとっても
かなり意外なことだった。

「とよピー(豊島さん)」はまだまだ童顔ながら、風格十分、さすがだった。
対戦相手は菅井八段で、彼が勝てばプレイオフだったけれど、無念の投了。
いよいよ追い詰められた段での菅井さんの苦悶の表情は鬼気迫り、
私には見ていられないほどのものがあった。

降級してしまった広瀬さんと齋藤さんはA級棋士では少数派となる妻帯者で、
特に広瀬さんは子育て中で、我が子かわいさで研究もおぼつかないほどメロメロなのか。
それはよく分かる。
齋藤さんは新婚。

今、棋界最高リーグのA級に居続けるには、菅井さんのように「修羅(自分でそう言って
いる)」にならねばならないのだろうと思う。
将棋戦法の最新型に通じ、しかも、それを嫌って変則(?)力戦に持ち込む相手にも
実力で勝ち切るには、子どもを持つことどころか、結婚、あるいは恋愛すらも邪魔に
なってしまうのが実情なのだと思う。

今A級は、レーティング上、実質的に豊島将之九段、永瀬拓矢九段、
そして菅井竜也八段が抜きん出ていると言って良く、今回の最終順位もそれを裏付けた。
前名人だった渡辺明九段がその上記3強に伍してはいるが、この人はA級最高齢で妻帯者、
子持ち、しかも多趣味なので、天才棋士ではあるけれど、来期も安定して活躍できる
保証は全くない気がする。また藤井八冠に散々やられたことで、自分を「オワコン」視
している向きも少しあるようだし。打倒藤井を人生最大目標にしていよう3強にまず
気力面で負けてしまっていると思う。

さらにレーティング上全棋士中のトップ3に食い込む藤井さんと同い年(21歳)の
伊藤匠七段や、新四段ながら大天才の呼び声高く、勝率だけのことなら藤井八冠と1位を
競っている若干18歳の藤本渚くんが同じく藤井打倒で燃えに燃えている状況だ。

太宰の「家庭の幸福は諸悪の本」というセリフがあるが、幸せな家庭生活を営みながら
今の将棋界では「修羅」にはなれないと思う。
そしてなれなければ、トップ棋士ではいられないのだ。

だから棋士は結婚すべきではないなどと言いたいのではもちろんない。
結婚を機に飛躍した棋士が今までいなかったわけでもないのだし。
しかし、今の「トップ棋士」上位10人のうち、妻帯者はたった2人(羽生善治九段=5位
と渡辺明九段=10位というレジェンド棋士)なのだ。この2人は別格過ぎる。

もう一度書くー

AI時代の将棋界において、将棋戦法の最新型に<常に>通じ、
しかも、それを嫌って変則(?)力戦に持ち込む相手にも実力で勝ち切るには、
子どもを持つことどころか、結婚、あるいは恋愛すらも邪魔になってしまうのが実情なのだ
と言ったら言い過ぎか。

広瀬さん、齋藤さんの降級で、来期A級棋士10人中妻帯者は2人だけになる。
渡辺さんと千田新八段だ。千田さんは女流棋士と最近結婚、姉さん女房であり、
しかも棋界のこと、棋士のことを熟知する人だし、さらに千田さんはまだ伸び代があるから
結婚を機に飛躍する可能性はあろう。

けれど、藤井聡太を倒そうとする棋士こそがトップにいるA級では、
菅井さんのように「修羅」に、そして永瀬さんのように「人間をやめないといけない」と
言わねばならぬほどに生きていかねばならないのが実情なのだ。

そして藤井八冠はイヴェントや解説で忙しい中ではあるが、今己を打倒せんとする者たちを
返り討ちにするために、そして将棋にもっと強くなるために、
大天才なのにさらに<屋上屋を架す>かのような努力を今日も重ねているのだ。


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