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平成の終わりに

平成最後の日、とか。

私は、元号という文化は「時代感覚」というものをつくり、
時間というとりとめのない<もの>なのか<こと>に一定の区切りをもたらす
つまりは物語や論文の章立てのようなことだと思う。
むろん1960年代とか70年代とか、西暦での10年=decadeで区切るー
いや<句>切るのも同じようなことなのだけれども、
そんなにきれいに時代に読点や句点を打てるはずもないわけで、
日本において、天皇という<人>の、戴冠時には不確定な在位期間を1時代とするのは、
まさに無味乾燥な時間に人間的味付けと意味づけをするものとして
<おもしろい>と思っている。

しかし、例えば「平成の頃は」などと積極的に使うかとなると話は違う。
自分が生まれた時代は昭和だが、「昭和の頃は」とは言ったことがない。
「昭和30年代は」とは言ったことがある。
つまりそれは、20年に無謀な戦争で一度この国が存立すら危ぶまれるまでになって
10年経ち、その辺りから高度経済成長が始まり出し、そして10年経って東京五輪が
終わった翌年までという、国民全員が行け行け状態だった<あの頃>のことだ。

10年がはっきり記憶に残るようになるのは、私にとっては昭和40年代からで、
西暦で言えば1965年から、なにしろBeatlesの歌に慣れ親しみ始めた頃だ。
私の友人・知己との会話では、「(西暦)60年代」と言う方が頻度は高いが、
昭和40年代と言っても共通の区切り方として同じほどに有効なものだ。

ただし、1970年はBeatlesが解散した年であり、大きなメルクマールだ。
1979年まで、Beatles不在、アーティストの百花繚乱のdecadeとなり、
1980年にJohn Lennonが殺されてしまう画期があって、西暦10年区切りはやはり
「昭和45年から55年まで」という区切りよりもはるかに鮮明ではある。

平成は10年ごとに語るのがなかなかむずかしく思う。
0年代、10年代、20年代・・・そういう区切りが、昭和のようにはできない。
昭和は0年代は軍部擡頭、10年代は軍国主義の跳梁、戦争での破滅、
20年代は新憲法制定もあって国のありようはあられもないほどに180度転換し、
対米追従は国策の要、30年代はその日米安保を利しての経済成長、
40年代はその前10年の経済一辺倒のありようが成熟期に入り、
50年代はそれが爛熟していった。
短い60年代では、いわゆる「バブル崩壊」前夜の狂乱だった。
なんとまあ、わかりやすい6 decadesだったことか。

平成の始まりはそれでもやはり画期だった。
昭和は20年までとそれ以降で社会のありようが地と天ほどに違ってしまっているから
統一感が乏しいけれど、平成初年ではもう戦後43年を経て「平和国家」としてのかたちが
整いつつあったし、経済はすさまじいほどの活況だった。
新天皇は日本国憲法の精神と共に大人として成長されたような方であり、
軍国主義日本の残滓がいよいよ一掃されるような感覚があった。
「平成」は完了形として実際そう思われた(私には)。

世界平和のため、ご自分の立場でできることはされ尽くした天皇であったと思う。

それでも、人間である以上は当然人間的なことからすべて解放されるわけもなく、
結局男系男子世襲という固陋な考えが残るままの交代になってしまったのは
いかにも口惜しい。

もちろん、天皇が政治的になってしまっては元も子もない。
本心では女性天皇容認、あるいは女系世襲もあってよいとお考えであったとしてもー
それは考えにくいけれどー
それを口に出されることは厳に慎まれたのであろうし、
あくまで世論の醸成を待ち、結論は次代へと思われているのだろうと推察する。

私は「令和」という年号は、決めた政府が信用ならないから好きになれない。
けれども、同世代の新天皇陛下は、誠実一筋の、
私には到底真似のできぬ理想的な愛妻家で(失笑)、
その最愛の女性との間の一粒種を愛し抜かれるその道徳的規範性を
こころから尊敬申し上げる。(尊敬申し上げる点はそればかりではないが。)

徳仁様のような天皇は未だ嘗て存在しないだろう。
(もちろん<ような>を外したら自明に「存在しなかった」と言えるが。)
祖父母は戦争の時代に、父母はその後のアフターショックの時代に生まれ合わせた。
その系譜を継ぎつつ、「守り抜く」と宣言し雅子様への無上の愛を誓い、
そのとおりに生きられ、一粒種は女の子、愛子さまー

天皇ご一家をこれからも国民統合の象徴としてゆくのなら、
その意味を国民一人ひとりが深く考えていかねばならない。
妻と娘をこよなく愛する天皇、そしてそのお三人が象徴ならば、
いよいよ次代の日本は変わらなければならないだろう。




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